距離のはかりかた 京大ミスコン騒動をうけて

11月祭期間の休暇を利用して、友人Sと自転車で琵琶湖の北湖を1周(通称「ビワイチ」「北湖一周」)してきた。全行程150kmを2日間で走りきるコースだった。

 

ついこの間までバリケード事件で話題になったり、ミス・ミスターコンテストで物議を醸していた京大の喧噪から逃れ、静かで美しい自然を満喫した。旅館は安くてきれいである上にほぼ貸し切り状態だったので、私たちは周りに遠慮することなく浴槽で大の字になりながら語り合った。

 

 

 

友人S(以下"S")「俺はそういう諍い*1を遠巻きにみてるの、なんかおもしろいと思っちゃうんだよなあ。」

 

私「そう思えるのうらやましいわ。僕はそんなんで両陣営が低次元でいがみ合ってるの見てるだけでも閉塞感があってつまらんしいやになる。なんか楽しむコツってある?」

 

S「あ~DKってあれだ、『炎上』を楽しめないタイプの人だ(笑) なんだろう、やっぱ『意見を持たないこと』っていうのかな。わざわざ中立を崩して内容に直接関わる意見を持っちゃうと負けみたいなとこあるっていうか」

 

私「確かに、どちらかに賛成した瞬間にその反対陣営の意見は『自分たちへの攻撃』になるわけやからね」

 

S「そうなんだよなあ、そんで関係も必要もないのにわざわざ自分から巻き込まれに行くって、もう『そんなつまんないことよくやるよなあ』って感じだよね」

 

私「『呼ばれもしない紛争地帯にいく』いう感じやな。なるほど、そういう感じをぼーっと眺めて『なにしとんやろなあ』なんて思いをはせると」

 

S「まあそういう感じだな。あと、よくあるのが『ある部分についての特殊な性質をさも全体のものであるかのように一般化する』っていうタイプの飛躍」

 

私「ああ、最もわかりやすい例でいうと『男は~』『女は~』ってやつ」

 

S「そうそう、それも『お前、よくそんなこといえるな』って感じじゃん」

 

私「わかるわ、『そんな大胆なことよういわんわ』って思う」

 

S「そういうのもなんかおもしろくない?」

 

私「風刺は大好きやわ。そういうのが炎上嫌いな自分にとっての『救い』になってる。でもSみたいな『騒動をおもしろおかしくとらえる』というのが自然にできないと、そういうのを作り出すのは難しそうやな。それは一種の『能力』やと思うわ」

 

 

 

問題の当事者だった場合は直接関与しないわけにはいかないし、問題そのものを解決できる場合やその他立場によっては積極的に関わるのは自然なことだと感じる。また問題によっては(あるいは立場によっては)自分と直接関わりがなくとも「身につまされる」ように感じることもあるだろう。「これは自分を含めてみなが考えるべき問題だ」と思う事柄もあるかもしれない。

 

しかし、いずれにせよ「自分と問題との距離のはかり方」を心得ていなくてはならない。当事者なら「当事者だという自覚」を、観察者なら「観察者だという自覚」を、といった具合に、問題を認知した以上、自分がその問題とどのようにつながっているかを適切に認識する。これをまちがえるとわざわざ自分から騒動に突っ込んだりだとか、逆にあたかも自分が騒動の渦中にいるような気がしてしまったりだとか、足場をどちらかの二者択一の陣営に吸収されてしまったりだとか、とにかく無用な不快感をあおられることになる。情報メディア、最近でいうと特にSNSを利用するにあたって、私自身「距離をはかる能力」の重要性を肌で感じる。

 

実は、Sは先日ミスコン炎上そのものをメタ的にとらえマイルドに揶揄するコンテンツを作り出し、そこそこの成功を収めた。 自分自身が騒動そのものに直接関係がないと明確に知り、巻き込まれない位置を保ちながら、状況を当意即妙に表現した結果である。

最終的にウケをとれるような当意即妙な表現が出てくるかどうかは、それこそ「舞い降りてくるや否や」にかかっているが、前提として「自分は部外者」であり「どこでどういう騒ぎになっているか」をきちんととらえていることが必要条件になる。これができたら炎上も「楽しいお祭り騒ぎ」にちがいないが、少なくとも適切な距離感を持つということはすでに前述のとおり大切なことだ。

 

それにしても、やはり琵琶湖めぐりはすばらしい体験だった。宿泊地までの距離と時間をはかり損ない、到着予定時刻を2時間も遅れた私たち初心者ふたりは暗い夜道を「いまごろNF(11月祭)いってるやつら、めっちゃ楽しんでるんだろうなあ。俺らがこんな怖い思いしてる間に」などと弱音を吐き心細くなりながら進んだりもした。しかし、それ以上に途中の景色はとても美しく、ロードバイクでの走行が気持ちよかったので、終わらないうちから「またやりたい」などと気の早いことを言ったりもした。次があれば、より適切なペース配分ができるようになっているだろう。

 

*1:京大ミスコン騒動のうち「鍋よそい」方面での炎上のこと。詳細はここでは省略