体にやさしいダイナミック学習

Alexander Arguellesというアメリカの大学の先生がYouTubeシャドウイング("歩きながら"音源の発音を真似る)や筆写法("発音しながら"書く)を紹介していたのを見つけた。とてもアクティブな学習法で、いかにも脳によい刺激がありそうに思えた。さすがに外で軍隊歩きしながら英語をRepeat after meするのには抵抗があるので、当座しのぎに家の中でしゃかしゃかとカニ歩きしながら音読している。

 

何かを学ぶにはのめり込むこと(engagement)が大事だということは、多くの人がゲームなりスポーツなり何らかの形で気づいたことがあるだろう。のめり込みについて「興味があるからのめり込める」といった風な半分諦めの入った言葉を耳にするが、興味があればのめり込んだことになるとも限らないし、逆にのめり込みに必要不可欠なものでもないのではないか。興味があってもしんどくて継続的に取り組めないこともあれば、なんとなしにやり始めてから俄然おもしろくなるということもある。

 

自分自身を対象にのめり込ませるためには「興味」よりむしろ「集中」の方が的に近いように思う。そして、振り返ってみると、この「集中」は、脳のリソースがすべてインプットに向けられているときよりも、いくらかアウトプットの方向に割かれているときのほうが達成しやすい。「聞く・読む」ばかりに"集中"するよりも「書きながら・話しながら」の方が、かえって他のことに気を配る余裕がなくて意識が散乱しにくい。それに加えて体を動かしていると、なお絞りがきくということなのだろう。

 

そしてダイナミズムを取り入れた学習は、語学に限らず効果がある。数学者が実際に着想を得るのは机の前よりもむしろ風呂中や散歩中だという話は至る所でなされている。銀閣寺の前には西田幾多郎が思索にふけった「哲学の道」という小径もある。

 

勉強からくる肩こりは年を重ねるごとにひどくなっていく。肩こりとインターネットディストラクターとしての厄介さはいまやいい勝負である。ものを書く、授業を受けるなど座りっぱなしを要求される場面はどうしてもあるので、動き回ってでもできる(そして効果の高い)勉強を模索・拡大するという課題がホットになりつつある。