本気の幸せ: そんなものに心身を託してみるという経験
本気の幸せゲットだよ!!
プリキュアといえばなぎさちゃんとほのかちゃんが出てくる初期かせいぜい次作のMax Heartくらいまでしか出てこない(それもろくに観たわけではない)ので、内容どころか登場キャラも知らない。ただ、このOP Let's フレッシュプリキュア! にはかなり"中毒性"*1がある。
いましているバイト先でこの曲と出会い、まもなく脳になじんだ。ノリノリのアップテンポなメロディに単語レベルでパワフルな歌詞。プリキュアの他のテーマソングに比べても抜群の勢い。いかにもプリキュアらしい(いや、観たことないんやけどね)。
本当に歌詞のどの部分をとってもパンチがきいているのだが、とりわけぼくをくらくらさせるのが冒頭のフレーズである。
「本気の幸せ」
「幸せ」を「本気」で修飾している。
ダメとかいいとかそういう話ではない。そんな「手近な幸せゲットだよ!!」なんて歌って欲しいわけやないしな。それもう子ども向けちゃうやろ。
もともと「幸せ」という言葉には、他人が発すれば取り違えようがないのに、いざぼくが自分で使おうとすると空恐ろしさや宙ぶらりんな感じがするという難しさがある、とでも言えばいいのだろうか。
あるいはぼくにとっても実は明白な表現なのかも知れないが、「幸せ」という単語を使うことそのものに抵抗ないしは反発を感じているのかも知れない。「そんな安直で俗っぽい表現にぼくの気持ちを託すもんか」と啖呵を切れるほど反骨精神もりもりで生きてきたわけではないが、そのかけらくらいはその時々の人間関係から拾い集めてきた。まあ「幸せ?」ときかれたら「しあわせやで」と答えるくらいには、自分の心身を「幸せ」という得体の知れない表現に投げ込むふりくらいはする*2し、時には「ああ、これを『幸せ』と呼んでも悪くないな」と腹部くらいまでは浸かることも吝かではない。それでもなおぼくの精神は「幸せ至上主義」と縁遠い。
ところがこの曲の歌詞は幸せという曖昧な霧のかかった天国に向かって猪突猛進している。愛、絆、幸せ。およそぼくが普段特に目指していないものを目指している。それがおもしろい。このフレーズにさしかかると背筋がぞくぞくする。
つまり、ぼくはやはり「幸せ」という言葉を本心を言い表すために軽々しく使うことはできないが、場面状況によってはごまかしながら用いたり、「幸せ」を慎重に認めたりもする。幸せを高らかに歌う曲は自分が持ちあわせていない思想が流れているので、普段の自分から離れてそこへ想像を巡らせ脳を浸してみることはおもしろい。
ここまで書いて気づいたけど「幸せ」という言葉で頭しびらせるってなんか変態っぽい。ぼくの耳元でささやいてみてほしい。うひょう、想像するだけでぞわっと(ぞくっと)する。あかん、何かに目覚めそうや……。