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自己紹介の時季である。はじめこそいかに簡潔さと誠実さとが手をつなぐ点を見いだそうとしたが、どこをどう切り取ればよいのか判然としない。そしてやはりいまの自分の力ではどうしても無理が生じると悟ってからは、不自然でない範囲で自分の情報をなるべく出さずに場の話題を楽しむことにしている。「4回なんです。いまさらですけど活動してみようと思って~」と言っておけば事足りる。

 

自分はどうしても後れている。この後れが何によってもたらされたのか、どういう事情があったのか、言葉でとらえ損ねたストーリーの断片が意識下へと抜け落ちる。手許に残った抜け殻からは到底満足のいく説明は導き出せない。それにそのストーリーの断片をいまさら必死になって拾い集めようとする行為そのものが、いかにも潔さを欠いた言い訳がましい態度のあらわれであるような気がして、結局「自分の無能ゆえ」という、安易で苦い結論をとりあえず採用するよりしかたがない。

 

みんなそれぞれに事情がある。ストーリーがある。それは明白なことだ。ぼくは自身の独自性、特殊性を信じているわけではない。むしろ逆で、自分のストーリーも凡百のうちのひとつに過ぎない、ぼくでなくとも誰が抱えていたって不思議ではない、ありがちな苦労話として手放そうとしている。これまで何度もそうしたつもりなのだが、気づけば部屋の隅に積もっているホコリのごとく意識される。