記念日

2019年7月31日(水)が記念日になった。なんの記念日か? つれ(ハンネがへびみたいなので以下へびこにします) *1がジムに入会したのである。へびこの運動嫌いときたら筋金入りで、おそらく階段10段と、10分まちのエスカレーターなら、エスカレーターをとるんちゃうか、というレベル。中高時代はいわずもがな文化部である。ただし中学時代はブラスバンド部に所属しており、部活動でランニングやマーチング(これは結構きつい)をさせられていた模様。なまじ意図していたよりも運動をしなければならない場面がおおかったぶん、自分の運動嫌いを再確認、強化していったのではないかと察せられる。ぼくは運動の楽しさをおしえたくて自転車やらボーリングやら誘ってみたものの、あまりいい思い出にはなっていないようだった――ビワイチ1日め、雨の日の夕方、30km走って湖の北端にあるひとけのない上り坂の前、尻の鈍痛と機能を放棄した脚、立ち尽くし冷えるほかない体、レンタカーに自転車を積み込んでまわれるのなら、寿命を20年差し出したって惜しいものか――賤ヶ岳の絶望を這い上がり、ついに完走した彼女は全世界に感動の嵐を巻きおこし、翌年ノーベル平和賞を受賞するもこれを辞退。メディアに取材・報道自粛を要請したため、このことは2019年現在、人びとの記憶にはもはや残っていない……いや、病院は間に合ってます。

 

へびこがなぜジムへ通うようになったか? アニメ「ダンベル何キロ持てる?」のおかげである。へびこはオタクなので、ぶち上がるアニソンと2次元のgood-lookingキャラのセットが非常によく精神に作用する。へびこはパリピとかチャラ男とかギャルなどを苦手としているタイプ(もっとも、ぼくを含めた周囲の人間はだいたいそう)なのだが、そんな彼女があろうことかラップに興味をもったのもアニメの影響である。一里ぼっちちゃんが校舎裏で不良たちとマイルドセブンをふかしてるのを発見するくらいの驚きである。いまはメビウスか。「人生なにがあるかわからない」を6年にわたる彼女の変化を通して感じつづけている。思えばビワイチの前に弱虫ペダルを見せておくべきだったのかもしれない。

 

ダンベルはちゃんと初心者を引きずり込もうという意志をもって作られているのがよい。ひびきちゃんの 160cm 55kg というBMIにすると21.5のリアルな数字、どか食い、はち切れる水着、ナンパまち。ちょいちょいサービスシーンをはさんでノンケ男性視聴者を釘付けにする一方で、体型に関して悩める女性視聴者にとっては親近感のわきやすい主人公なんだろうと思う。

 

ぼく自身以前5キロ以上太っており(160後半65+kg)、友達と階段を上り下りするたびに「ちゃんと前みて。お前がコケたら俺らが危ない」と言われていた経験から言えるのだが、おそらくあれくらいの体型はギリギリ自分をごまかせる。鏡を見るときに気持ち顎を引けば一人称視点で二重顎は消えるし、少し背筋を伸ばせば段腹でなくなる、それくらいのライン。もちろんリラックスした自然体の状態で顎の下はゆったりつまめてしまうし、意識していないときでも座ったときになぜかお腹にバックルのひやりを感じているから、結局は自己欺瞞にすぎないことを肚の底でうすうす承知しているのだが。

 

実際にやるイメージを持ちづらいジムでやる種目と、自宅でいますぐできる種目を併せて丁寧に紹介してくれているのがとてもうれしい。また、現金で親しみやすいひびき、ストイックでクレイジーな朱美、あらゆるトレーニーの背中をやさしくしっかり押す街雄……硬軟ないまぜのバランスのとれた空気が居心地のいい教室のようで安心できる。キャラひとりひとりの性格もセリフも立っているからアニメとしても退屈しない。音楽はキャッチーでありながらあまり頭を使わずきけるから、筋トレソングとしてよい。スケベ要素も含めてたいへん教育的だと思う。

 

へびこがジムに入会してがんばるというと俄然こちらもやる気が出る。学校付属のジムはあまりに換気が悪く、すぐに酸欠でくたばってしまうので通わなくなってしまったが、自宅での自重トレは継続してやっていきたい。がんばるぞ。これからが楽しみだ。

*1:文句があったら直接連絡ください